中学受験生にオススメの本紹介②
※イデアスポット中学入試勉強会資料『2019年度国語出典一覧』をご覧になりながら記事を読んで頂けますと、より理解が深まります。
【論説文・説明文】
入試問題の出典を見てみると、身近な題材を扱ったものから各分野の入門書まで、毎年幅広いジャンルから出題されています。そのため特定の著者の作品を読んでおくことで入試に有利になるということはありません。しかし、いずれの文章であっても、それが論説系の文章である以上、「相同表現」「対比表現」「因果関係」を用いて主張を展開するという構造に違いはありません。したがって、読書を通して論説系の文章を読む力を身につけようとする場合、身近なテーマで、主張や論理の展開が分かりやすい作品にできるだけ多く触れ、論説文における論理構造を感覚的に習得することが大切です。
《オススメ》初級・標準レベル
池内了『科学の考え方・学び方』
斉藤孝『読書力』
池上彰『はじめてのサイエンス』
日頃から本を読みなれているお子さんであれば、抽象的な概念を扱った文章や文体の難しい作者の作品を読むことも効果的です。中学校によっては、大学入試で出題されるような作品からの出典も見られます(昨年度の入試でいえば、岡田暁生『音楽の聞き方』、外山滋比古『思考の整理学』、福岡伸一『生物と無生物の間』など)。こうした文章が出題されても、怯まずに正しく論理展開を追うために、ある程度読み慣れておくことが入試本番で大きなアドバンテージになります。
《オススメ》応用レベル
高階秀爾『日本人にとって美しさとは何か』
河合隼雄『こころの処方箋』
外山滋比古『知的創造のヒント』
柏木博『「しきり」の文化論』
【小説・物語文】
重松清や辻村深月といった例年出題の多い作家もいますが、これは特定の作家が出題されやすいというよりも、こうした作家の小説に主人公が小学生や中学生であるものが多いというのが原因であると考えられます。したがって、特定の作家の作品を重点的に読むというよりは、自分たちと近い年齢の登場人物が出てくる作品を中心に幅広い作品に触れることが大切といえます。また、本を読む習慣が身についていない子にとって、長編小説は心理的なハードルが高いので、短編小説を選ぶこともオススメです。
《オススメ》初級・標準レベル
森絵都『クラスメイツ 前期』
論説系の作品同様、普段から本を読み慣れている子であれば、時代背景・場面設定を考えて読みこまねばならない作品や、登場人物が自分とは離れた作品を読むことも重要です。またいわゆる文豪と呼ばれる作家の作品から出題する学校もある(昨年度入試でいえば、芥川龍之介、有島武郎、梶井基次郎など)ので、有名作品に触れることも有効です。自分とは環境や背景の違う登場人物に意識を向け、難解な作品に時間をかけて向き合うことで、文字情報から客観的に場面を想像する力が身につきます。
《オススメ》応用レベル
山川方夫『夏の葬列』
イデアスポット京都校
国語科主任 仙仁 透