中学受験生にオススメの本紹介①

前回の記事で少し触れましたが、先日の小学5年生の授業で重松清さんの「さかあがりの神様」と「サマーキャンプへようこそ」という作品を扱いました。


重松清さんはちょっと控えめな人の細かな心情を書くのが上手く、また子どもを主人公にした作品が多いこともあり、入試で頻繁に扱われる作家の一人です。
「さかあがりの神様」も「サマーキャンプへようこそ」も、どちらも小学生が主人公。
授業中に扱った範囲には描かれていませんでしたが、「さかあがりの神様」は弟ができて以降、弟ばかりにかかりきりになってしまったお母さんにモヤモヤする女の子が主人公、「サマーキャンプへようこそ」は少し大人びた男の子と息子を思う父親との物語です。

どちらも小学生の主人公の視点からはっきり気持ちが描かれているので、自分自身に重ねたり、友達のことのように共感したりということができる作品だと思います。

 

【『日曜日の夕刊』(新潮文庫)】
上記の2作品は、どちらも『日曜日の夕刊』(新潮文庫という短編集に収録されており、40ページ足らずなので、読書のとっかかりとしてもちょうどいい長さではないかと思います。

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「さかあがりの神様」や「サマーキャンプへようこそ」のように、まさに小学生の等身大の心情が描かれた作品がある一方で、『日曜日の夕刊』という作品自体にはいろいろな作品が収録されており、主人公の年齢や属性はマチマチで、中には、小学生が読むにはちょっと…と思うようなモチーフを扱っている作品も無いわけではありません。


というわけで、重松清さんの作品の中でも、もう少し全編を通して「安心して」読むことができるものを何冊か紹介したいと思います。

 

【『季節風』(文春文庫)】

重松清さんらしさを感じることができ、かつどの作品も楽しんで読めるものと考えて頭に真っ先に浮かぶのは『季節風』シリーズです。

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このシリーズは「春」「夏」「秋」「冬」に分かれていて、それぞれに12作品ずつ、テーマも主人公も異なる作品が収められています。
それぞれが20ページ~40ページくらいの短編で、好きな作品を「つまみ食い」できることからもオススメのシリーズです。
私のオススメは『季節風 春』に収録されている「拝復、ポンカンにて」「よもぎ苦いか、しょっぱいか」、『季節風 夏』に収録されている「風鈴」、『季節風 秋』に収録されている「ヨコヅナ大ちゃん」あたりです。
どれも日常の「ああ、そういうことあるなあ」というようなちょっとした心情が上手く表現されていて、読んでいるうちにどんどん作品に引き込まれます。

 

 

重松清さんの作品は、子どもたちが共感できるものばかりでなく、大人だからこそ分かる気持ちが描かれているものも数多く存在します。
親子で好きな作品を読み比べるという楽しみ方もいいかもしれません。

 

イデアスポット京都校

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国語科主任 仙仁透