英語新講座『アイエルフ(iELF)』について②

 前回は,ESL第二言語としての英語)やEFL(外国語としての英語)という聞きなれない言葉の区別について触れながら,英語学習の正解というのは学習者がどのような環境にいるのかによって異なるということをお話ししました。今回は,“『自分の英語』を育てる”というアイエルフ(iELF)のコンセプトについてお話ししようと思います。

 そのためにはまず日本人の間で起こっている英語学習についてのある奇妙な現象についてお話しするところから始めましょう。

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 言語というのは誰かに何かを伝えるために存在しています。誰かにメッセージを伝えたり,誰かからのメッセージを理解しようとしたり,そういうコミュニケーションの手段として私たちは言語を使っています(もちろんその誰かは目の前の他者であるかもしれないし,過去や未来の他者,あるいは自分の中に存在する他者であるかもしれません)。だから,わたしたちが英語を学習するのも「英語という言語を使えるようにするため」であるということについては,みなさまの合意があることだろうと思います。

 

 ところが,日本では教室の外で英語を使う場面というのは一般的にあまり多くありません。むしろ,実生活で英語を使うことなど全くないという人がほとんどでしょう。ほとんどの学習者にとって英語を使うチャンスは英語学習の中にしかありません。でも,実際に「英語を使う」という感覚で勉強している方はどれくらいいるでしょうか。「英語を使う」ということよりも「テストでいい点をとる」ための勉強をしている人のほうが圧倒的に多いように思います。自分が「英語を使う」という感覚なしで英語を学習するというのは,例えるなら自分で調理するということを全くイメージもせずに,料理のレシピ本ばかりを一生懸命読んでいるようなものです。なるほどレシピ検定には受かるかもしれませんが(そんなものがあればの話です),その人はおいしい料理を作ることも,冷蔵庫のありあわせで作ることも,時短でお弁当の準備をすることもできるようにはならないでしょう。

 

 誤解のないように言っておきますが,僕はテストが悪いとか検定試験は意味がないとかそういうことを言っているわけではありませんし,テスト前にその対策をすることには何の抵抗もありません。むしろテストを受ける以上は最低限の準備があってしかるべきと考えています。僕が言いたいのは,学習の成果をはかるためのものであるはずのテストが、多くの学習者にとって学習の目的と取り違えられてしまっていることのデタラメさです。TOEICや英検で良いスコア持っている人でも実際のコミュニケーションで英語を使えるとは限らないというのは,専門家でなくても多くの人が知っていることですが,「コミュニケーション重視」とか「使える英語」と言いながら,自分で「英語を使う」ということを意識した学習をさせるための実践がほとんど行われず,むしろ入試にスピーキングテストを導入することでますます「テストのための勉強」というのが4技能にわたってを強化されてしまっているというのが今の英語教育の現状です。

 

 さらに日本人は「ネイティブ」という言葉に弱いと言われます。たとえば本屋の英語コーナーを歩けばすぐに「ネイティブならこう言う」とか「ネイティブしか知らない」とかいう文言を見つけることができるでしょう。でも,非母語話者がネイティブの英語をマスターすることを目標とするのはそもそも努力の方向性として間違っています。ネイティブにはなれないし、ネイティブになる必要もない。ましてや,英語は国際共通語として世界のたくさんの非ネイティブによって使用されているわけで,ネイティブの英語だけを唯一の規範とした学習では世界の英語に対応できない英語オンチにもなりかねません。また,極端なネイティブ志向は「完ぺきな英語じゃないと恥ずかしい」とか「ネイティブならこう言わないんじゃないか」という意識を生み,英語を使うことのハードルを無意味に上げてしまいます。

 

 アイエルフ(iELF)では,“『自分の英語』を育てる”というコンセプトを掲げています。「英語を使う」という意識を持って学習すること。そしてそれは「完ぺきな英語」ではなく,手持ちの,常に不完全な『自分の英語』でしかありえないということが大切です。英語は使いながら育てていくのが当たり前。言語というのはそういうものです。

 先日おこなわれたアイエルフ(iELF)準備講座の体験会は親子で参加していただき,実際に英語を使うということがどういうことなのかを体感してもらいました。ふだんオンライン英会話で「英語を使っている」はずの子どもたちも、テキストに沿った形で話すのと自分でゼロから英語をアウトプットすることの違いを体験できたようです。アイエルフ(iELF)で「自分の英語を使う」という感覚を身につけるけることで,今後の全ての英語学習に違いが生まれます。オンライン英会話でもリスクを取って『自分の英語』を使うようになるでしょうし,入試や検定のための勉強も『自分の英語』を育てるものとして取り組むことができるはずです。

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※準備講座はすでに定員の半数以上のお申込みをいただきました。まずは準備講座で彼らにどのような変化が起こるのか,このブログの中でも随時紹介していきたいと思います。

 

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英語科主任 山﨑謙介